2020年10月某日、有名女性タレントがテレビ番組内で語った発言が世論を賑わせました。その発言とは「不妊の一番の理由は堕胎」というものでした。
私自身、直接この番組を見ていたわけではなかったので、どのような状況でこの女性タレントはあの発言に至ったかはわかりません。しかし、この発言にまつわるニュースを見たところ、「不妊」というものに対し偏見ともとられるとてもひどい内容でした。
私には、現在2人子息子がいます。そのうち長男は、体外受精にて授かった命です。不妊治療の中でも高度生殖医療と呼ばれている治療を経験してきた私にとって、この女性タレントの発言は、見逃すことは絶対できない酷い言葉として胸に突き刺さりました。今回この件があり今まで自分が乗り越えてきた道のりを改めて振り返ると、よく耐えられたなと思います。
私が妊娠できる道は体外受精しかなかった
「不妊」とは、妊娠を望んでいる夫婦が避妊をせずにSEXをしても、一定期間(約1年程度)妊娠しないことをいいます。私は結婚してから7年後に長男を授かることができたので、立派な不妊症です。原因は私の体質にあり、私は「抗精子抗体」という抗体があったからです。
「抗精子抗体」とは、精子が体内に侵入した場合、体が精子を異物と判断して精子を倒してしまう抗体のことをいいます。7年間の不妊治療生活の中で、私の体にはなんとこの抗体があることがわかりました。
「抗精子抗体」は、精子が体内に入ると精子を異物と判断します。よって、どれだけタイミングをあせてSEXしても、人工授精で質のいい精子を送り込んでも私の体内にある抗体が精子を倒してしまうため、一般的な不妊治療では妊娠できません。私には、体外受精しか妊娠できる道は残されていなかったのです。
原因不明がほとんどと言われている不妊症の現実
7年の治療歴の中で運よく「抗精子抗体」という不妊原因にたどり着き、一番最適な治療は何か、ということが明確になりました。これは不妊治療を受けている人の中では、すごく運がよかった方だと思います。
なぜなら、不妊症で悩んでいる人の多くは原因がわからないため、何年も何年も悩み続け、治療し続けているからです。
原因がわからない治療ほど苦しいものはありません。どうすれば妊娠というゴールにいち早くたどり着けるのか、いつになったらかわいい赤ちゃんをこの手に抱けるのか、その苦しい思いと日々戦い続ける…それが不妊症の現実なのです。
多くの治療経験者の心の傷をえぐった発言
不妊治療生活は、よくひとつの列車に例えられます。そしてこの治療期間は長く暗いそして出口が見えないトンネルだといわれます。確かに、私が経験した7年という治療期間の間は暗く長いものでした。
暗く長いトンネルの中で、今もたくさんの女性がもがき苦しんでいます。そんなたくさんの女性を前に「不妊の一番の理由は堕胎」と発した女性タレント。私は失礼は重々承知のうえで怒りがこみ上げました。
先に話しましたが、私は「抗精子抗体」が不妊の原因でした。「抗精子抗体」は、精子をやっつけてしまうため、堕胎につながる妊娠はもちろん、精子と卵子が出会い受精するという工程にすらたどり着けないのです。
不妊に対し知識が薄い女性タレントの発言は、多くの治療経験者の心の傷を深くえぐったのです。
こんな現実だからこそ期待する国の政策
今回のこの女性タレントの発言の件で一般的に不妊の知識はまだまだ知られていないことが浮き彫りになりました。
そんな中で現在、不妊治療費の保険適用が騒がれています。これはとても喜ばしいことです。実際に私もかなりの治療費を支払いました。これについてもいずれお話ししたいと思います。
不妊治療費の保険適用され、少しでも不妊で悩む人が治療を受けやすい環境になり、そして何より不妊に対する偏見のない世の中になってほしいと思います。
現在、あの非情な発言を行った女性タレントや番組を放送した放送局は、発言に対し謝罪を行ったようですが、それですべてが解決したわけではないと私は思います。少なくとも女性でありながら、同じ女性の傷をえぐった代償はとても大きいものではないでしょうか。
みにゃ♥
石川県
石川県奥能登出身。 里山里海に囲まれた自然あふれる土地で育児に励んでいます。 結婚直後に不妊が発覚し不妊治療を経験。 結婚から7年後やっとの思いで妊娠・出産。 しかし、やっとできた子供には発達障害が… 私の育児は常に波乱万丈! だけどめげることなく楽しいことを探し続けています☆