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産後調理院の体験記④ 〜新生児を前にうろたえる新米母〜

りんごりんご

韓国の産後調理院体験記、シリーズ最終回は、調理院の一日をご紹介しつつ、新生児を前にしてとまどったことや、困ってしまったことなど、新米母ならではの経験談をお伝えしたいと思います。

ギュッと巻かれる新生児

調理院では、朝6〜7時が沐浴の時間でした。7時前になると新生児室から「今から行きますよ」とコールが鳴って、洗いたてピカピカの息子が部屋にやってきます。沐浴後は気持ちが良いのでしょうか。表情はうっとりと、いつもなんだか幸せそうに見えました。

ところで、韓国では新生児が常に布で巻かれているのをご存じでしょうか?生まれたその日から1か月ほど、赤ちゃんたちは白い清潔な綿の布でギュッと巻かれます。布の名は「ソッサゲ」。薄手のおくるみと似ています。

最初「こんなにギュッと巻かれて大丈夫なのかな?」と心配しましたが、看護師さん曰く「しっかり巻いたあげた方が、お腹の中にいる時と同じように安心できる」とのこと。でも、息子は窮屈だったのか、よくもぞもぞと動いて布から両手を出して寝ていました(笑)。

ちなみに、産院から調理院に移動する時は、さらに分厚いおくるみ「コッサゲ」で赤ちゃんを包むように指導を受けました。私は親戚が出産祝いにくれたコッサゲを持参していたのですが、生地がポリエステル製だったので、看護師さんに「綿じゃなきゃだめよ。すべるから」と言われてしまいました。確かに巻きにくかったかも?!コッサゲは寒い日の外出時に使うほか、家の中で布団がわりにも使えます。

出ない!痛い!涙の授乳と搾乳

沐浴後の母乳授乳を皮切りに、2〜3時間置きの授乳が始まります。私は最初母乳が全然出なかったので、2回に1回は粉ミルクに頼っていました。また、母乳をあげたいけれど赤ちゃんがまだ寝ている時や、深夜ゆっくり休みたい時、胸がパンパンに張って痛い時は、搾乳するよう指導を受けました。

実は私、調理院に入った当初は「搾乳って何ですか?」という状態でした。それまで搾乳機の存在も知らなかったのです。なので、使い方を聞いて驚きました。まるで牛の乳搾りのように母乳を搾り取ってくれる機械なんですね。

しかし、母乳が順調に出るまでは、この搾乳機の刺激が痛い痛い!あまりに辛くて、廊下ですれ違った韓国人ママたちに、「搾乳ってこんな痛いものなんですか?」と半べそかきながら聞いてしまったほどでした。

出産後、数日間出る母乳を「初乳」といい、新生児の免疫力を高める重要なお乳だと聞いたので、痛みをこらえて搾乳をしましたが、出産後にこんな苦労が待っていたとは。母乳って自然にあふれ出てくるものだと思っていましたが、そうではなかったんですね。もちろん、最初からちゃんと出る人もいるようですが…。

嬉しくも不安な母子同室タイム

授乳と搾乳以外の時間は、1日3回の食事と間食を自室で済ませたり、以前ご紹介した調理院の無料プログラムに参加したり。何も用事がない時は、部屋でテレビを見たり、ベッドで休んだりして過ごしました。

基本的に子どもに会えるのは、自室で授乳をする時だけだったのですが、新生児室の消毒が行われる夜19時からは、1時間の母子同室タイムがありました。

新米母はこの1時間が嬉しくもあり、ちょっぴり不安でもありました。まず、赤ちゃんの抱き方がわからないのです。なんとか授乳を終えても、その後げっぷが出なかったり、しゃっくりが止まらなかったりするとすごく焦りました。

おむつの替え方にも自信が持てず、服を着せてソッサゲ(おくるみ)で巻く時も、看護師さんのようにきれいに巻けずグチャグチャに。また、息子が激しく泣き出すとどうしていいかわからず、私が泣きたくなるという始末でした。

そして、この時期一番困ったのは「自分の息子という実感がなかなかわかない」ということでした。授乳以外一緒の部屋にいなかったことが原因だと思うのですが、息子を前にしてとまどうことがあると、すぐ看護師さんたちに頼り、「あとはお願いします」と逃げ腰になっていたんですよね。

そんな調子だったので、2週間の滞在を終える頃には「家に帰ってから大丈夫だろうか?」と不安になってしまいました。「ここで生活していた通りのリズムで暮らせば大丈夫よ」と院長に励ましてもらった一言を頼りに、恐るおそる、自宅での新生活をスタートさせたのでした。

産後調理院は天国だったのか?

調理院での2週間は良いことも残念なこともいろいろありましたが、今振り返ってみるとやはり、「調理院はママの天国だった」と思います。毎日3食誰かにご飯を作ってもらえて、一つ屋根の下で24時間子どもをケアしてくれる人がいるというのは、新米母には心強く、ありがたすぎる環境でした。

とはいえ、韓国ではごくまれに、調理院内で看護師による虐待事件が起こったり、新生児がロタウイルスに集団感染したり、という悲しいニュースが流れることもあります。もし今後、「韓国の産後調理院を利用してみたい」という方は、事前の見学をしっかり行ったり、利用した人の声を参考にしたりするなど、納得いくまで情報を集めてから選択することをお勧めします。

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りんご

りんご

韓国

韓国在住、日韓ハーフ1歳児の母です。30代後半で国際結婚。新婚生活スタートと同時に子どもを授かり、異国の地で手探りの妊娠期間と高齢出産を経験しました。日本では紙媒体の編集記者の他、ファミリーサポートセンターでの勤務経験もあり。今地球のどこかで、ちょっぴり孤独も感じつつ子育てに奮闘中の方へ、私の体験・失敗談を通して「1人じゃないよ」とエールを届けられたら嬉しいです。